最後の仕事 

今日の記事も、また 「女将ヒストリー」 。 
今書いているのは、3年半前、店を移転した時のことです。

あらかじめ申し上げておきますが、今日の記事は割と長いです。
で、オチはありません。

が、ワタシにっとっては、とても書いておきたかったことです。

読んでいただきたい気持ちは山々ですが・・・・
関心のある方だけ、「続きを読む」 にお進みください。

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最初の店を作った時は、全てが初めてでしたから、業者さんへ
何をどう頼んだらいいのか、それさえ分かりませんでした。

具体的なイメージがないので、全てにおいて受け身。
予算と言われても、見当がつかない。
本当に他人任せでした。 

けれど、今回は違います。

もう、借金でがんじがらめになるのは嫌。
最悪 撤退することも頭に入れて、無理のない範囲の店にしよう。
儲かって余裕が出来たら、また改装すればいいのだ。

お金をかけるところと我慢するところ、優先順位をつけて取り組みました。

そのとばっちりを受けたのは、間違いなく I さん。
だって、簡単な方法は、いくらでもあるのです。
事務所にあるカタログで、ほとんどのモノが揃うのですから。

でもドケチな依頼主(ワタシ)なので、いちいち 「これ、自分たちでも作れるよね」
とか、「こんなのホームセンターでも売ってるよね」 とか。

でも、本当にそうなのです。
家を建てたことのある方なら分かると思いますが、住宅メーカーの言いなりになっていると、高いものばかり買わされる羽目になります。
細かいことですが、自分たちでやったり量販店で買えば、うんと安く済む。

I さんは、「ったく〜、嫁さんにはかなわないなぁ」 と言いながら、
でも快く応じてくれました。
もちろん、「ここでケチると後々後悔するぞ」 というところは譲らずに。

あ、そうそう。
この間、ワタシが傷つけてしまった例の I Hのテーブル
あれも、既成品を買ったら楽だったのです。

でも、少しでも安く手に入れたいワタシは、メーカーのHPで I H部分だけ買えることに気づいてしまいました。
既成品のテーブルサイズが気に入らなかったこともあり、
「ねえ、I さん、こういうテーブル、大工さんに頼んで作ってもらえない?」

ちょっと奥行きの狭い小上がり(座敷)だったので、よくあるサイズのテーブルだと、座るスペースが狭くなるのです。 体の大きい人だと、落っこちるかも知れない。
無理を言って大工さんに作ってもらったことで、数センチ幅の狭いI Hテーブルが出来上がりました。もちろん、既成品よりも安くです。

それとね、二階に小さい個室があるんですが、前のお店は洋室に変えて使っていたんです。
でも、うちの場合は、またそこを座敷に戻したい。
もともとは和室だったので、昔の襖があったことはあったんですが、それがとんでもなくズタボロで・・・・。

新しいのを買わなくちゃ仕方ないと思っていた時、I さんが、レトロな硝子戸をどこかから持ってきてくれました。

「襖だって、けっこう金がかかるぞ。
この硝子戸をはめてみたら、意外と面白いんじゃないか」 って。

たしかに中の様子も見えてワタシも楽だし、譲ってもらった照明も大正レトロ風だったので、思いがけずイイ感じになりました。

でも、建物があちこち歪みまくっていたので、はまる予定が全然はまらない。
上下をどれだけ削ったことか・・・・。 
I さんは自分が言い出した手前、真夜中まで削っていました。(笑)

ああ・・・
あの時のことを、どんどん思い出してきました。

I さんは、全然嫌な顔しなかったなぁ。 いつも笑ってた。

なんで、あんなに優しかったんだろうと思います。

ワタシはあんなにコキ使ったのに・・・・。
あんなにケチンボなこと言ったのに・・・・。

いつも一緒に笑っていたことしか、思い出せません。

軽トラ


私たちの店が移転オープンしたのは11月。
翌年の春、エアコンを買い換えることになり、また I さんに手配してもらいました。

そのときの I さんは、
少し痩せて声がおかしかった。

ワタシは、嫌な予感がしました。
何度も何度も 「 I さん、大丈夫? ねえ、大丈夫?」 と訊きました。

I さんは、「大丈夫だよ。いつもと一緒だよ」 と言いました。

旦那さんもワタシも、「いつもと一緒のワケなんかない」 と思いました。



I さんは頑張り屋さんだから すごく頑張りました。 


だけど・・・・・



一昨年の年末、肺がんで亡くなりました。



お葬式も済んで、しばらく経ったころ、自宅へお参りに行きました。
その時、奥さんと久しぶりに ゆっくり話をしました。

「あの人、ふたりのことは、ずっと心配してた。
”大丈夫かなぁ、あの子たち、大丈夫かなぁ”って・・・・」

そうでした。
いつもいつも、心配をかけていました。

パニック


ワタシが 「無理ばかり言って申し訳なかった。 まだ何も恩返しが出来ていない」
と泣きじゃくると、奥さんは、こうおっしゃいました。

「あの仕事は、本人がやりたかったんだから、いいの。

ちゃんと新しいお店がオープンして

ふたりが頑張っている姿を見れて

あの人、すごく喜んでた。

最後にあの仕事が出来て、本当に良かったって・・・。

私もそう思います」

 


私たちは、 I さんがいないと、心細くてたまりません。



I さんに、もう会えないなんて・・・・・。



だけど、これからも頑張ろうと思います。



Iさん天使


I さん



私たちのこと、



ずっと見守っていてね。




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コメント

こんにちは(^^)

拝見して胸がいっぱいになりました。

Iさんの奥様のおっしゃっている事は本当だと思いました。
Iさんは本物の“職人”さんだったのですね。
やりたい仕事が出来て、本当に幸せだったんだろうなと思います。

Iさんは“心”と“魂”を込め、お仕事をされた事でしょう。

そうした仕事が出来る事、また、それを心で理解して頂けるお客様に出会えてた事、
その満足感は職人冥利につきる事でしょう。

Iさんは、あずきさんご夫妻からの要望が出れば出る程、
“職人魂”が燃えたのではないでしょうか?
そんな気がします。
双方が真剣に向き合った仕事って、大変なんだけど、愉しいものですもの。

Iさんは、あずきさんご夫妻のお店を手掛ける事が、きっと愉しくて仕方なかったんでしょうね。

結果、お客様の“満足”を越える仕事をされたIさんは
その道の“プロ”としても素晴らしい方だったのですね。

そして、その期待に応えて続けておられるあずきさんご夫妻こそが、私は素晴らしいと思うのです。

ダイアモンドはダイアモンドでしか磨けないそうです。
人もまた、人との出会いの中でこそ磨かれて行くのだな…。
ふと、そんな事を思いました。

HさんやIさんは、あずきさんご夫妻を磨きたくて仕方なかったんですよ。
お二人の目には、キラキラと光るのが見えていたから。
だって、HさんもIさんもダイアモンドだったんだもの。

そんな気がします。
素敵な話を有難うございました(*^^*)

あずきさん 素敵なお話ですね。
奥様の言うとおりだと私も思います。
あずきさんご夫妻の人柄がいい出逢いに繋がるんでしょうね

バナーの件、ありがとうございました。
早速、参考にしてみました。m(__)m
こんないいお話の時にバナーのことなど
とも思ったのですが・・・(*^_^*)

もう胸がいっぱいになりました。
Iさんは、プロの職人としてはもちろん あずきさん夫婦の応援団としても
やりがいのある楽しい時間だったのではないでしょうか。
あずきさんが主体的に変わって頑張ろうとしているのを応援したかったのだと思います。
今のお店は素敵な出会いと、応援団のサポートとあずきさんご夫婦の努力で
生まれた 格別なお店なのですね。
とっても良い『気』が生まれそう。

3話も読めて このシリーズファンとしては嬉しかったです。

Thanks!

あずきさん

素敵なストーリをありがとうございます。 Leiさんの言ってる様に、私も胸がいっぱいになりました。 ご夫婦で誠実に生きて、働いていられるからこそ、IさんやHさんのような応援団が周りに集まってこられるんですよね。 昨日と今日の女将ヒストリーを読んで、「ああ、まじめに、誠実に生きていかなきゃ!」と思いました。 そんな思いにしてくださったあずきさんの応援ぽち!

・ ゚・。* 。 +゚。・.。* ゚ + 。・゚・(ノД`)゚・。* 。 +゚。・

Iさん、情に厚いステキな方だったんですね。

時に、どうしてこんなにステキな方の命が
短いのだろうと、思わされる事があります。
悲しすぎる別れは、いろんな事を教えてくれますが、
それでももっと一緒にいたかったと思います。

知らないわたくしでさえ、
Iさんのお話に続きがあって欲しかったと思いました。

Iさんの素晴らしさが、このブログを読んでいる皆さんに、
あずきはんの言葉を通して伝わったんですね。(´ω`。)

コメントありがとうございます

色付きの文字kuririnさん
今回の記事はちょっとおセンチなので、ドン引きされるかも・・・
と思ったのですが、何かを感じてもらえた人がいたなら嬉しいです。

Iさんのことはともかく、私たちには過分なコメントをいただきまして・・・。
恐縮しております。ノ(´д`*)

プチトマさん
いえいえ、お気になさらず。
バナーの件、うまく出来るといいですね。
ワタシは、バナー作りにハマっちゃって。
記事書かずに、バナーばっかり載せたいくらいです。(笑)

leiさん
>>3話も読めて このシリーズファンとしては嬉しかったです。

この連載も長くなってきたので、一見さんには申し訳なく、
なかなか載せるのを躊躇します。
一人でも、こう言っていただける方があったので、ホッとしました。
ありがとうございます。

Kazさん
私たちがあまりにも頼りなかったので、いろんな方にお世話をかけました。
私たちのことはともかく、「世の中捨てたもんじゃない」
それが伝わればいいなぁと思っています。

はっちー
I さんのこと、本当に好きだったのよ、ワタシ。

悲しい別れだったけど、出会えたことに感謝したいと思っています。
で、Iさんに教えてもらった、いろいろなことを忘れないようにしたい。




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