やり過ごし期間
この記事は、「女将ヒストリー」の第9回。 「二足のワラジ」 の続きです。
二足のワラジ生活で、多少の安定収入を得るようになった我が家ですが、ワタシの心は相変わらず不安定でした。
経理的なことも、全て私がやるわけですが、毎月毎月、支払いは綱渡り。
明日のこと、来月のこと、ましてや来年のことなんて、全くメドがたたない。
もともと「儲かる」と思って、この商売を始めたワケではありません。
けれども、休みはたった月2日で、あとは毎日毎日、朝から晩まで仕事。
遊びに行く、時間もお金もありません。
その割に店のことには、付き合いや何やと、湯水のようにお金が要ります。
生活を楽しむ余裕なんて全然ない毎日で、
「何のために、こんなコトしているんだろう・・・」 いつも思ってました。
「スッパリやめて二人で勤めに出れば、どんなに楽だろう。
居酒屋チェーンの板前でもええやん」 と・・・・。
給料が安くても、やりくりには自信がありますし、何といっても休みがある。
普通の人の、普通の暮らしが出来るだけで充分。
そんな気持ちだったのです。
ある日、旦那さんと言い合いになり、思わず、
「ふたりとも、こんなツライなら、もう、店はやめませんか?
勤めにいくことは、アナタのプライドが許さないの?」
と言ってしまいました。
旦那さんは、ちょっと考えて、
「俺のプライドなんて、どうでもいい。
けど、勤めにいったら、大将に迷惑がかかるから」
と言ったんです。
皆さんには、何のことか、サッパリ分かりませんよね?
分かり易く説明すると、大将というのは以前勤めてたお店の大将のことで、
そのお店はうちと違って、相変わらず大忙しだったんです。
うちの人が辞めたあと、若い子を何回か入れたんですが、イマドキの子は
下働きが続きません。 すぐ辞めていきます。
結局大将は若い子入れるのは諦め、ひとりで頑張っていたんですが、
冬場の鍋シーズンだけは、ひとりではどうにもなりませんの。
非常に手間のかかる秘伝の名物鍋がありまして・・・・。
その仕込みが出来るのは、大将とうちの人だけなのです。
なので、冬場はむこうの店の分まで、仕込みを手伝いに行っていました。
自分が勤めてしまったら、もう手伝いに行けません。
大将ひとりじゃ、とても手が足りないから・・・という意味です。
意外な答えにビックリしました。
この話をすると、旦那さん本人は、「そんなこと、言ったか?」 と言うので
店を辞めないホントの理由ではなかったかも知れません。
けれど、こんなことを考えてるとは思わなかった・・・・。
ええ〜っ!
いくら、お世話になった店とはいえ、よその店のことでしょう?
嫁より、大将が大事なの?
悲しい気持ちになると同時に、旦那さんの生きて来た世界を見せつけられた気がしました。
で、「ああ、やっぱ、今はやめられない」 と思いました。
ワタシひとりだったら、いつ辞めてもいい。
けれど、あの人はここに来るまで、18年も修行したんだもの・・・・。
中学を出たばかりの遊びたい盛りも、真面目にずっと働いてきたのです。
やっと自分の店が持てたのに、今ここで諦めたら、そこら辺のフリーターと同じ仕事をしなければいけません。
18年って、やっぱ長いです。
せっかく頑張ったその18年を、チャラにさせるような真似は、ワタシには出来ない。
今、自分のわがままだけで辞めさせてしまったら、一生後悔するんじゃないかな。
・・・・そう思ったんです。
とりあえず、今はしんどいけど、なんとか食べていけている。
もうちょっと、頑張ってみよう。
ホントにホントに、ホント〜に頑張って、
そんでも、どうしようもなくなったら、辞めたらいいか・・・・。
この時、こう思い、しばらくのやり過ごし期間を過ごすことになります。
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- [2007/11/02 12:00]
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